能代カップの記憶
驚きのハーフタイムショー
サイト限定
特別寄稿&インタビュー
発売記念
特別寄稿1
能代工を忘れない
ディズニー映画『リメンバー・ミー』は、自分の曾祖父が有名な歌手だと思い込んでいた少年の話だ。そこにこんな話があった。人は二度死ぬ。一度目は文字どおりの死。二度目は故人を知る人が亡くなったとき。語り継がれることがなくなることもまた、死であるというわけだ。
県立能代工業高校がなくなった。閉校ではない。少子化に伴う近隣校との統合で、その名前がなくなったのである。
しかしその名前がなくなるだけでも、騒動が起こるのは能代工だからだろう。全国優勝58回を誇る高校バスケット界の名門校。その名を消してなるものか、とOBを含めた有志が立ち上がり、校名を残すよう署名活動を起こした。結果的にそれは認められず、2021年春から「県立能代科学技術高校」として新たなスタートを切る。
バスケットに青春を捧げ、今なおバスケットに携わる一人としては寂しい気もする。しかし統合するもう一つの学校、県立能代西高校の関係者を思えば、無理のないところだろう。彼らもまたいくつもの思い出をその校名に刻んでいる。
『リメンバー・ミー』で、少年の曾祖父は有名な歌手ではなかった。そうなる可能性を秘めていたのだが、有名になろうと目論むパートナーに裏切られ、殺されてしまったのだった。少年は死者の国でそれを知り、曾祖父の名誉を回復させた。そして少年が現世に戻ってきたとき、曾祖父はその名を残せたことで、人々に忘れられていなかった。つまり、二度目の死を免れたというわけである。
能代工にはいくつもの記録があり、数多の名選手、名コーチを輩出したことでファンの記憶にも残る。その名前はなくなるが、先達が残してきた「必勝不敗」の魂はこれからも引き継がれていく。能代工のバスケットに魅せられ、語り継ぐ人がいるかぎり、いや、能代科学技術高校でバスケットを続ける高校生がいるかぎり、「能代工」は永遠である。
