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特別寄稿2

能代カップの記憶

驚きのハーフタイムショー

 初めて能代カップに参戦したのは、第2回大会(1989年)でした。木都を象徴するような木製の間接照明が他の体育館とは趣の異なる、現在の能代市総合体育館が会場になったのは1994年から。それまでは、もっとこぢんまりとした能代市民体育館で開催されていました。

 注目の試合になると、あっという間に立錐の余地もなくなる盛況っぷりは、今も昔も変わりません。ウォーミングアップから満席になります。閑古鳥が鳴いている試合でも、点差が縮まるとどこからともなく観客が増えていきます。SNSなんてなかった時代ですから、もしかすると、「今、どこどこ高校となんとか高校の試合が面白くなってきましたよ。みなさーん、今すぐに市民体育館に行きましょう!」と町内放送で流れているのではないか、とひそかに思っていました(笑)。

 当時は、加藤廣志先生とともに加藤三彦コーチがベンチで采配をふるっていた時代です。その三彦先生にお願いして、コートサイドにマネジャーがスコアをつけている学校の机を準備してもらいました。また、能代工体育館では裏能代カップとしてBチーム同士の試合もあり、選手の自転車を借りて、能代工体育館と市民体育館を行ったりきたりしていました。

 大会前日には、能代工の全校生徒が体育館に集まり、そこで招待試合が行われます。中でも印象に残っているのは、北中城が来たときの招待試合です。

 1994年の第7回大会で北中城は、初参加で初優勝をさらっていきました。前年の第6回大会は安里幸男先生が率いる北谷(ちゃたん)が優勝したので、沖縄勢が2連覇したことになります。バスケットのカラーが異なることもありますが、その驚きは招待試合のハーフタイムに起こりました。

 公式試合でもハーフタイムショーがある沖縄では、野球部がバスケットをして笑いをふりまいたり、意外とうまいプレーに拍手が起きたりする文化があります。しかし、このときのハーフタイムショーは、さっきまで試合に出ていた選手が、帽子を片手にブレイクダンスを始めたのです。

 能代工の生徒たちもそれに気づき、やんやの喝采が沸き起こります。その名も“ダンサー”と呼ばれていた城間君は、今はプロのダンサーとして舞台に立っています。後半になると、その“ダンサー”はバスケット選手に戻り、ハッスルプレーを披露して全校生徒を再び驚かせました。

 海外の韓国、ドイツ、アメリカから能代カップに参戦したチームもありましたが、北中城のハーフタイムの光景が一番印象に残っています。ちなみに、その年の富山インターハイで能代工は、北中城と決勝で対戦し、冷や汗の末に優勝を果たしました。

 

 もちろん、本番の能代カップでも印象深いシーンはたくさんあります。

 小納真樹・真良兄弟、大場清悦の琴丘中トリオがまだ1年のとき、彼らがメンバーチェンジで名前を呼ばれると、もうそれだけで観客の能代市民の皆さんがワーッとざわめきました。どれだけすごい選手たちなんだ? と思っていると、その理由がすぐにわかりました。スティールからの反転の早さ、ショットガンパス、大場のダイナミックなプレーには拍手喝采の嵐。小納ツインズはちょっとのパスのずれが原因で試合中に喧嘩しています。きっと、求めているレベルが違うんだな。そして、能代市民の好きなバスケットはこれなのかと理解し、うんうんと納得。すぐに彼らの名前をインプットしたのは言うまでもありません。

 また、田臥勇太が3年時の仙台戦。ハイライトシーンは1年だった志村雄彦とのマッチアップで、へその下からくりくりした目でぐいっと田臥を見上げ、へばりつく志村のディフェンスにさすがの田臥も嫌がります。志村が早々のファウルアウトでベンチに戻ると、「よくやった」とぱかりに佐藤久夫先生に頭をぐりぐりされていました。能代のバスケットファンは、ナイスプレーには相手チームであろうと拍手を送ります。そして、三彦監督は観客席に聞こえるほどの大声でこう言います。

「何で1年生が拍手もらってんだよ!」。さらに「なんで拍手もらうんだよ、一生懸命やってるからだろ? おまえ(田臥)は何なんだ、周りから見たら全然いらないよ、一生懸命やれよ」。

 辛辣な言葉がポンポンと飛びます。試合の見どころは、コート上だけでなく、ベンチからの言葉、応援席の熱気、コーチたちのアクション。そのときの空気感が一体となって脳裏に焼きついています。

 能代カップは、高校生の大会としては珍しくトーナメントスタイルではなく、リーグ戦方式をとっていることに起因する面白さがあります。日程によってダブルヘッダーの日と1試合だけの日があり、その対戦順によっても、翌年以降に主力となるであろう下級生、普段プレータイムが少ない選手をどこで起用するか、監督たちは考えます。目の前の試合に勝つことも大事ですが、多くの観客がいる舞台で、試合経験を積むことはのちのちチームにとって、ベンチの選手にとって、大きな経験値となるからです。

 総合的な点から、この試合は勝負をかけた試合だな、試合結果よりもチャレンジさせることを優先させているな、ということがわかります。ミスをしても使い続けたり、ワンチャンスの勝負どころで度胸があるかどうかか試してみたり。リーグ戦だとそれが可能になるので、チームの意図がくっきりと見えてきます。ピンチがチャンス。失敗が将来の成功につながることが少なくありません。

 ただ能代カップの真骨頂は、やはり最終日です。この日はミニバスや中学校の選手たちもやってきます。当然、大入り満員状態になります。地元の子どもたちは椅子席の前のスペースに体育座りで居場所をキープし、「これよりステージの役員席前を開放します」というアナウンスが入ると、ステージから足を下げて座る子どもたちで埋まります。どちらも観戦するにはとっておきの特等席です。

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